書きたいけれど、書けないことと書き始められないこと。

 仕事を辞めた。思いもよらない奴と慕っていた人が亡くなった。僕はこの先の未来のことはまるでわからない。だけど、やっぱり物語を書こうと思う。自分自身があまりにも情けなくて何度も泣いた。「明日こそは」と何度呟きながら泣いたんだろう。それでも変わっていかない日々に侵されながら僕の人生は刻一刻と過ぎていっている。困ったものだ。僕が尊敬をする人たちはそれぞれにどんな想いを持って文章を書いているのだろう。わからないから、少しでもわかりたいと思った。そして、どんなに暗くて動けない夜が来ても、ユーモアを最後まで手放さずに持とうと思う。どれだけ周りの人間に言葉で殴られて、刺されて、心の中の中の更に細かい臓器みたいなものが飛び出したとしても、持っていたい。社会は僕に死ねと言っているのかもしれないと考えたこともあった。ロープもカッターナイフも両手に持った。だけど、死ぬ勇気は持ってなかった。ダサくていいから、生き続ける惰性さを持っていたのかもしれない。それでこんなものを書いているのだから。

自分の好きな街の中で起きる冒険譚を書きたい。どうしようもならない現実に苦笑いをしながら、必死に生きるあいつを書きたい。

リチャード・ブローティガンブローティガンの小説を日本語で表現した藤本和子さんそして、サリンジャー高橋源一郎さん、早川義夫さん、糸井重里さんのような文章を書きたい。僕は書くことにすら臆病になっていた。それでもやろうと思った。